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アーカイブ: 2月 2019

金属アレルギーの原因は
口の中にあるかもしれない

皆様こんにちは
寒い日や逆に汗ばむ陽気になったり、このところ気温の寒暖差が激しいですね。
免疫力が低下し、体調が崩れやすい状態になっている方も多いのではないでしょうか?
しっかりと睡眠を取り、栄養のあるものを食べるなどして、免疫力の低下しないようにすることが大切かと思います。

金属アレルギーとは?

金属アレルギーとは、金属を原因として生じるアレルギー症状全般のことをいいます。
アクセサリーなどに使用されている金属が汗で溶けてイオン化すると、体内のタンパク質と結合して新たなタンパク質に変性し、それを体が“異物”とみなすことによってアレルギー反応が生じます。
症状はすぐには現れなくて、許容範囲を超えてから発症します。
このため、遅延型アレルギーとも呼ばれています。
よく似たタイプが花粉症です。
金属アレルギーは日本人の10人に1人が発症しているといわれるほど一般的な皮膚疾患で、大人になってから発症する人も珍しくありません。
例えば 「ピアスをつけると耳がかゆくなる」 「ネックレスが触れている部分が赤くただれる」 「手のひらの荒れが何をしてもなかなか治らない」 このような症状が見られる場合、金属アレルギーの可能性があります。
金属が触れた部位やその周囲の赤みやかゆみなど。このような症状のことを、​「接触皮膚炎」 「接触皮膚炎」 と呼んでいます。
しかし実は金属アレルギーには、他に「全身性金属皮膚炎」と呼ばれるものがあります。
​全身性金属皮膚炎とは、接触皮膚炎のように金属が直接皮膚に触れることによって生じるわけではなく、歯科金属が唾液により溶け出しイオン化することでアレルギー反応を生じるものです。

全身性金属皮膚炎の主な症状としては、掌蹠膿疱症(手足に膿がでる病気)・汗疱状湿疹(手 足に水ぶくれができる病気)・難治性のニキビ・アトピー性皮膚炎などがあげられます。
保険診療で主に使用されているニッケル・コバルト・クロム・水銀は最も金属アレルギーを起こしやすい金属です。(下記グラフ参照)
また、1970年代を中心に使われていたアマルガムという金属は水銀を50%も含まれています。
アレルギーを引き起こすとともに、水俣病の原因となる重金属です。

金属アレルギーに対する治療の流れ

①検査
金属アレルギーとひとくちにいっても、私たちの身のまわりには、いろいろな種類の金属があります。
どの種類の金属が患者さんの体質に合わないかを正しく調べることが大切です。

②パッチテスト
皮膚科にてお口の中の金属にアレルギーがあるかないかを調べるために、歯科用金属をすべて網羅した、歯科用金属シリーズパッチテストを用いて、パッチテストをおこないます。

③診断
パッチテスト、問診、レントゲン検査、口腔内診査などをもとに、金属アレルギーの診断をいたします。

④修復治療・交換治療
分析の結果、アレルゲンが口の中の歯科金属に含まれていると判明した場合、これらを除去する必要があります。
具体的には詰め物・被せ物・入れ歯などを、アレルゲンフリーの材料(セラミックやレジン)への交換治療をおこないます。

<アレルゲンフリーの材料>

セラミックス
陶材のみでつくられた素材や、人工ダイヤモンドの材料になるジルコニアなど、科学的に安定 した素材「セラミックス」を用いたメタルフリー治療です。
当院ではジルコニアのみで作られ たジルコニアインプラントも取り扱っております。

ダイレクトボンディング
歯科用の強化レジンを用いた治療です。虫歯が比較的小さく、レジンアレルギーのない方に対 して行います。

グラスファイバー(ファイバーコア)
人工歯を支える土台(コア)に、金属ではなくグラスファイバーを用います。見落としがちな 土台部分からもメタルフリー治療をサポートします。

ノンクラスプデンチャー
部分入れ歯のバネ​通常の部分入れ歯では、金属が用いられる「バネ」の部分を樹脂製のものに変更し、「メタルフリー入れ歯」を作成します。

⑤アフターケア

通常の歯科治療と同じく、金属アレルギーの治療もアフターケアがとても大切です。
アレルギー症状は、全身のコンディションにより大きく左右されます。
患者さんご自身も日常の健康維持にご留意いただくと共に、必ず定期健診をお受けください。

金属アレルギーかもしれないなど、心配な方は一度歯科医師にご相談ください。

歯科医師 岡田啓子

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歯科治療における
アナフィラキシーショック

もうすぐ立春ですね。
先日、近くの公園で梅の蕾を見つけました。
寒気の中にも早春の息吹が感じられ、ほっこりした気持ちになりました。
とは言え、まだまだ厳しい寒さが続きそうです。
防寒対策をしっかりして、風邪やインフルエンザに負けないように頑張りましょう。

少し前になりますが、小児の歯科治療中に患児が死亡したというニュースを、耳にした方もいらっしゃるのではないかと思います。
患児が死亡に至った要因は複数考えられます。
まず、①治療時に使用するロール綿での窒息による低酸素症
次に、②局所麻酔でのアナフィラキシーショックによる低酸素症
そして、③麻酔中毒による低酸素症
これらの3つの要因は、すべて最終的には低酸素症が死因となりますが、それぞれの誘因は異なります。
例えば、窒息は物理的な上気道閉塞によって起きるもので、ある程度、事前に予防が可能です。
しかし、アナフィラキシーショックや麻酔中毒は予防が難しく、迅速な診断・対処が求められます。
今回は、アナフィラキシーショックに焦点を当てて説明していきます。

1.アナフィラキシーショックとは?

表1:抗原-抗体反応の違いでアナフィラキシーショックにはⅠ型〜四型アレルギーまであります。

種類 Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型 Ⅳ型
関与する
抗体
IgE IgG・IgM IgG・IgM T細胞
関与する
細胞
肥満細胞
好塩基球
K細胞・NK細胞
マクロファージ
好中球
血小板
マクロファージ
キラーT細胞
代表的
疾患
気管支喘息
アナフィラキシー ショック
重症筋無力症 血清病
ループ腎炎
ツベルクリン反応
接触性皮膚炎
(金属アレルギー)

その中でも、もっとも症状の進行が急速で命に関わるのがⅠ型アレルギーで、その中にアナフィラキシーショックは分類されています。
よくテレビで拝見するピーナッツを食べて起きるショックやミツバチに刺されて起きるショックがこれになります。

2.発生機序

肥満細胞や好塩基球の膜表面の抗原特異的IgEにアレルゲンが
結合することで、これらの細胞から即時にケミカルメディエーター
が放出されます。
この放出されたケミカルメディエーターの働きにより様々な
アナフィラキシー症状が出現します。

3.アナフィラキシーの症状

①皮膚症状:蕁麻疹
②呼吸症状:気管支喘息
③循環症状:頻脈(100/回以上)・血圧低下
④消化器症状:腹痛・嘔吐・下痢

アレルゲンの暴露から症状発現までの時間が短いほど重症化します。

4.見分け方

局所麻酔中毒 アナフィラキシー
ショック
迷走神経反射
原因 局所麻酔薬の多量投与 局所麻酔薬に対する
抗原抗体反応
副交感神経の優位
症状 しびれ感・耳鳴り
痙攣
意識消失
呼吸抑制・停止
昏睡
心肺停止
皮膚症状:蕁麻疹
呼吸症状:気管支喘息
循環症状:頻脈・低血圧
消化器症状:腹痛・嘔吐・下痢
顔面蒼白
徐脈・低血圧
悪寒
意識消失
嘔吐・悪心
めまい

5.発生頻度

アナフィラキシーショックの発生頻度は0.0054%で、その中で危篤になるケースは3-10%と言われています。

6.発生した場合の対応(対処)について

万一、アナフィラキシーショックが起こってしまった場合に歯科医院ではまず、①救急車の要請(迷わず119番!!)
次に②モニタリング・酸素投与・AED装着、更に③アドレナリンの筋肉注射エピペンの使用
→アレルギー体質の場合、両親や患者本人が持っていることあります。

7.アナフィラキシーショックを起こさない安全な治療はどんなものか?

アナフィラキシーショックを絶対に起こさない安全な歯科治療方法はありません。
なぜなら、様々な薬剤や材料がアレルゲンとなるためです。
アレルゲンが特定されていれば、使用しなければ起きませんが、ほとんどの患者が自分では把握していません。
そのため、起きないようにするのと、起きた場合に迅速に対応できるようにしておくことが、最も安全な歯科治療だと考えます。
では、起きないようにするには?
問診が重要です。
アナフィラキシーショックのアレルゲンは家族で似ているため、両親や兄弟姉妹に局所麻酔薬でアナフィラキシーショックの既往がある場合、その種類の局所麻酔薬の使用を避けるか、アレルギー検査(パッチテスト、DLST、Skin Testなど)を行うのも良いかもしれません。
また、果物(グレープフルーツなど)にアレルギーがある場合にはグローブなどに含まれるラテックスでアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
その他には歯科でも抗生剤や解熱鎮痛剤を処方しますので、薬剤へのアレルギーについても患者から伝える必要があります。
それにより、アレルゲンと疑われる薬は処方しないようにします。

8.アナフィラキシーショックの既往がある患者さんへの対応は?

「局所麻酔薬でアナフィラキシーショックを起こしたことがある」や「局所麻酔薬にアレルギーがある」の患者さんは歯科治療を受けられないのか?まず、以下の対応を考えます。

(1)アレルギーを起こした時の詳細を聞く
→大抵の場合は迷走神経反射や脳貧血のケースが多い。
①どのような症状を認めたか?
→皮膚症状や呼吸症状など
②症状は局所麻酔薬を注射してから、すぐに起きたか?
→大抵は15分程度で出現する
③緊急搬送された
→アレルギーの検査はされたか
④それとも、しばらく休憩して帰宅したか?
⑤局所麻酔を行なったのは、何度目か?
→1回目か2回目に起きやすい

中には、迷走神経反射や脳貧血のこともあります。
これらを総合評価して、さらに以下の対応を考えていきます。

(2) 局所麻酔薬の種類を変更する
①2%リドカイン1/8万エピネフリン含有(オーラ注®・キシロカイン®)
②3%プロピトカイン(シタネスト®)
③3%メピバカイン(スキャンドネスト®)
→上記の三種類が歯科領域では局所麻酔薬として使用されています。

③アレルギー検査を皮膚科に依頼する

④大学病院への紹介

大学病院には麻酔科医が常駐していて、緊急対応が迅速に行います。
また、全身麻酔下で局所麻酔を併用せずに治療が行えます。

9.安全な設備はどのようなものか?

アナフィラキシーショックが起きた場合に真っ先に必要なものが揃っていることが安全です。
具体的には以下の設備が挙げられます。

①アドレナリン(エピペン)
②モニター
③AED
④酸素ボンベ
⑤救急セット(緊急薬や挿管道具、点滴セットなど)
→それを扱える歯科麻酔科医または歯科医師がいる場合。

10.アナフィラキシーショックを患者さんは広く心配すべきものか?

患者さんもアナフィラキシーショックという現象について知っておくことは大切です。
しかし、良く分からずにアナフィラキシーショックと診断されたり、患者さん自身が局所麻酔薬は使えないと勝手な自己判断をしてしまい、実際はアナフィラキシーショックではないのにも関わらず、歯科医院をたらい回しされるケースも見受けられます。
疑われる場合には、施設の情報を収集し、歯科麻酔専門医の在籍等、人材と設備が整った安全な施設で施設の選択を行い、事前に局所麻酔使用の可否をしっかりと確認することが大切だと思います。

歯科麻酔専門医 里見ひとみ

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