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ドライマウスを昆布のうま味で改善⁈

日に日に秋が深まり、紅葉も少しずつ色付いてきました。
早いもので今年も残すところあと2ヶ月となりましたね。
冬支度などに多忙な時期ですが、体調を崩さないようにお気を付けてお過ごしください。

近年、急激な高齢化を背景に味覚障害を訴える方が増えています。
高齢になると、食べ物の味を感じにくくなります。
味覚は、「甘味」「塩味」「苦味」「旨味」の5種類があります。
舌の先端では甘味、両側の手前では塩味、両側の後ろでは酸味、奥側では苦味、舌全体で旨味を感じます。

食べ物を口に入れると、舌の表面の部分にある味蕾(みらい)で味を感知し、大脳の味覚中枢へ信号として伝わり味を感じています。
また食べ物の香りや口に入れた時の触覚、熱いか冷たいかという温度によっても味を感じます。
加齢により個人差もありますが、「塩味」「甘味」の味覚が低下すると言われています。

味覚障害によって濃い味付けにしないと味が分からないため、食欲不振から栄養不足になってしまったり、塩分や糖分を取りすぎてしまい、高血圧や動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病に繋がる可能性が高くなります。

味覚障害の原因は

・服用薬の副作用
・栄養障害:亜鉛欠乏など
・心因性:ストレスなど
・口腔疾患:カンジダ、ヘルペスなど
・全身疾患:糖尿病、高血圧、腎疾患。悪性貧血など

がありますが、味覚障害を訴える方の94%に口腔症状が現れます。
味覚障害に対して歯科が関わる部分で最も高頻度なのは、唾液の分泌量が減って引き起こされるドライマウス(口の渇き)です。

唾液は

・食べ物を飲み込みやすくする
・消化しやすくする
・口臭や虫歯を防ぐ
・味を感じやすくする
・口を通して入ってくる細菌から体を守る

といった働きがあります。
この唾液分泌が何かしらの原因によって減少すると

・口が乾く
・味が感じにくくなる
・口臭が強くなる
・口の中がヒリヒリして痛い
・口の中がベタベタ、ネバネバする
・話しにくくなる
・食べ物が飲み込めなくなる
・虫歯や口内炎が出来やすくなる

といった症状が現れます。

ドライマウスを改善するためには、まず水分を細めに摂取して口の中を潤しましょう。
潤す効果のあるマウスウォッシュや口腔用の保湿ジェルや保湿スプレーも用いると良いです。

そして、唾液の分泌のリズムを取り戻すためにいくつかの方法もご紹介します。

・亜鉛の摂取
味蕾(みらい)の再生を促す亜鉛を多く含む牡蠣、レバー、卵黄、牛肉などがおすすめです。

・唾液の分泌を促すマッサージ
唾液腺マッサージも効果的です。
耳の下から頬に位置する耳下腺、顎のエラの内側の顎下腺、下顎の舌下腺を5~10回ほど優しく指でマッサージしましょう。

または粘膜ブラシを用いた口腔内の小唾液腺をマッサージ方法もあります。

・日常的に人と話すこと、唇や舌を動かすことでも唾液分泌が促されます

また、昆布出汁のうま味成分を用いた訓練方法もあります。
昆布出汁のうま味成分が舌の味蕾(みらい)細胞で味覚として感知されると、唾液反射が起こります。
うまみは後味が残るので、唾液反射が長く続くため、唾液の分泌を促進します。

昆布出汁作り方
細かく刻みを入れた昆布30g/500mlをペットボトルか水筒で作り、1日に10回程度、一回30秒間口をすすぎます。
なるべく長く口に含み、出汁を味わうことによって唾液の分泌を促してくれます。
毎日訓練することにより、2週間ほどで効果を実感できるようになります。

昆布出汁の味が苦手という方は、すこし酸っぱさを感じるくらいの濃度に希釈した
レモン水で同じように訓練してみてくださいね。
頑張ればきっと効果は現れます。

美味しく食事をすることは人生において大きな喜びであり、健康の基本です。
そのためには丈夫な歯、顎、そして正常な味覚は必要不可欠です。

少しでも気になる場合は診察を受け、担当の先生とよく相談してみてください。
疾患が原因の場合は適切な治療を受けるようにしましょう。

歯科医師  鈴木美緒

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親知らずの抜歯,全てお話しします!

暑かった夏も終わり、気持ちのいい秋風に金木犀の香りを感じる季節となりました。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
季節の変わり目は体調を崩しやすい時期でもあります。
お風邪などお召しになりませんように、くれぐれもご自愛ください。

ところで皆さまは、親知らずと聞くと何を想像するでしょうか。
痛い、腫れる、抜かなければならない等マイナスなイメージを考える方が多いと思います。
親知らずが痛い、腫れると聞くのは何故でしょうか。
そして、本当に親知らずは抜かなければいけないのでしょうか。
親知らずについて、これから説明していきます。

●そもそも親知らずとはどういうものなのかご存じでしょうか。

親知らずは大臼歯の中で最も後ろに位置する歯であり、正式名称は第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)と呼ばれていますが、智歯(ちし)と呼ばれることもあります。
親知らずは最前方の前歯から数えて8番目にあり、永久歯の中で最後に発育します。
永久歯は通常15歳前後で生え揃いますが、親知らずは生える時期が概ね10代後半から20代前半です。
親知らずは上あご左右2本と下あご左右2本の計4本ありますが、元々親知らずが無い人や、4本揃っていない人など個人差があります。
親知らずの生えてくる場所が不足していたり生える方向が通常と異なるために、埋まった状態や傾いて真っ直ぐ生えてこないことがしばしばあります。

●親知らずが引き起こすトラブルとは?

1.むし歯

親知らずが斜めに生えてきたり、途中までしか生えて来ない場合は、歯ブラシが届きにくく、むし歯になりやすくなります。また、親知らずと手前の歯(第二大臼歯)の隙間に汚れがたまりやすくなり、手前の歯がむし歯になることもあります。

第二大臼歯は非常に大切な歯ですので、親知らずからの悪影響を受けないようにしておかなければなりません。

2. 歯肉の炎症

親知らずが斜めに生えたり、まっすぐ生えてきても途中までしか生えてこない場合は、歯と歯肉の間にプラークや食べかすがたまりやすくなり、親知らずの周辺が不衛生になります。
これにより、親知らず周囲の歯肉に炎症が起きてしまいます。
これは「智歯周囲炎」と呼ばれ、歯肉が腫れたり、痛みが生じます。

また、重症化すると口が開けにくくなったり、顔が腫れたりすることもあります。
智歯周囲炎がひどい場合は、炎症が軽減してから抜歯を行います。

3. 歯根の吸収

親知らずが手前の歯に食い込むように生えてくると、手前の歯の歯根吸収(根っこが溶けてしまうこと)を引き起こしてしまう場合があります。
歯根吸収が進むと、親知らずだけでなく手前の歯の抜歯も必要になることがあります。

4. 口臭

親知らず周辺は不衛生になりやすいことから、口臭の原因になってしまう可能性もあります。
炎症によって歯肉に膿がたまったり、むし歯が進行したりすることも臭いの原因になります。

5.歯並び

特に親知らずが横向きに生えている場合に多いのですが、歯が生えようとする力によって、前に生えている強い力で臼歯を押すことがあります。
結果として、歯全体に力が加わることで、歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。

6.歯肉や粘膜を傷つける

親知らずはお口の中に上下左右で合計4本生えるのですが、場合によっては1本しかない時もあります。
そのような場合には、上下で咬みあう歯の数が異なるため、親知らずによって咬みあうべき箇所の歯肉に傷をつけてしまうことがあります。
同様に、親知らずが歯列に対して、外向きに生えている場合には、歯を咬みあわせる際に、頬を噛むことで傷をつけることがあります。

7. 腫瘍や嚢胞 

骨に埋まっている親知らずの成分が原因で、含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)や歯根嚢胞(しこんのうほう)などの袋状の病変や腫瘍ができることがあります。
放置すると大きくなるため摘出術が必要になります。

●抜歯は必要?

親知らずが真っすぐ生えており上下で正常に噛み合っていて問題なく機能している場合や、親知らずがあごの骨または歯肉に完全に埋まっていて、口腔内やあごに悪影響を与えていない場合は抜歯する必要がないこともあります。
しかし、親知らずが原因で不快症状が生じたり、周りの歯や歯周組織にに悪影響を与える場合は抜歯を検討する必要があります。

●抜歯する時期は? 

親知らずを抜歯する場合には20歳前後が抜きやすく、術後の腫れや痛みも比較的楽に済みます。
その時期が丁度親知らずの歯根が形成されている途中のため下歯槽神経障害のリスクが軽減され、骨も柔らかく抜きやすいです。
30歳以降になると歯根が完成し、下歯槽神経が近い場合リスクが上がり、年齢を重ねるにつれ骨も硬くなるため麻酔が効きにくかったり、術後のダメージも出やすくなってきます。

●親知らずを抜くときのリスクはある?

1.下歯槽神経麻痺(かしそうしんけいまひ)

下顎の骨の中にトンネル(下顎管)があり、その中に口の周りの感覚神経(下歯槽神経)があります。
親知らずが神経に近い程、神経を圧迫または損傷してしまうリスクがあります。
損傷してしまった場合は、抜歯した側の唇やあご先、歯茎付近にしびれ(麻痺)がでてきます。

回復には数ヶ月〜数年と長期の経過をたどり回復していきます。
親知らずと神経が近い場合には、CT検査を行い、三次元的位置関係を把握した上で、抜歯を行う場合があります。

2.上顎洞穿通(じょうがくどうせんつう)

上の親知らずの抜歯の場合、すぐそばに上顎洞と呼ばれる鼻とつながっている空洞があります。
親知らずと上顎洞の位置関係次第では、口の中と上顎洞がつながってしまう場合があります。

上顎洞とつながると、お口の中から鼻に水が漏れたり、上顎洞炎(いわゆる蓄膿症)になる可能性があります。
多くは自然閉鎖されますが、閉鎖されなかったり上顎洞炎を起こしてしまったりした場合は、後日、手術が必要になることもあります。

3.感染

抜歯をした後の傷口に細菌が感染した場合に抜歯後感染が起こります。
感染を起こさないよう処方されたお薬は必ず服用しましょう。
また口腔内は細菌の多い環境にあるため、創部にバイ菌が入らないように口腔内を清潔に保ちましょう。

4. ドライソケット

通常は抜歯した部位を血餅(血の塊)がかさぶたのように塞いで、徐々に治癒していきます。
しかし何らかの原因でその血餅が剥がれ骨が露出し、強い痛みが生じます。

5. 皮下気腫

親知らずを分割するときに空気の圧力で回転する歯科用切削機械を使います。
このため、ごくまれに皮下組織に空気が入り込んで広範囲に腫脹を生じることがあります。

6.異常出血

通常抜歯後、数時間で出血は止まります。
抜歯後24時間は唾液に血が混じることがありますが、心配いりません。
ガーゼ等による圧迫が最も効果のある止血方法ですが、それでも出血が持続する場合は止血処置が必要です。

●抜歯の手術内容

親知らずがまっすぐに生えている場合には、他の歯と同じように抜歯することが可能です。
しかし、親知らずは斜めに生えてきたり、途中までしか生えてこないことが多く、この場合、通常よりも抜歯が難しくなります。
抜歯のため、歯肉を切開したり、歯や歯根を分割したり、骨を削るなどの外科的な手術が必要となることがあります。

1.麻酔

局所麻酔が主で、周辺の歯茎から麻酔(浸潤麻酔)を行います。
必要に応じて、やや長い針を使って、親知らずより奥の部分に麻酔をする場合(伝達麻酔)もあり、奥の部分に麻酔を行う方法のほうが強力です。
麻酔が一度効いてしまえば、痛みのある状況で処置をするということはありません。

2.歯茎の切開

親知らずが歯茎に埋っている場合、メスというナイフを使って歯茎の切開が行われます。
これはよく見えるようにするためと、歯が出てくるスペースを十分に確保するためです。

3.粘膜の剥離

切開後、歯ぐきを骨よりはがし、埋まっている歯をむき出しにします。

4.骨の削除

歯の一番膨らんでいるところが骨の中に埋まっている場合など、歯の周りの骨を、歯が出てきやすいように一部取り除きます。

5.歯の分割

歯の出てくる方向に、前の歯がぶつかってしまう場合には、抜くときにぶつからないように親知らずの歯の頭を削ります。
傾きが大きいときは、歯を削って2つや3つに分割することもあります。

6. 歯を抜く

歯を分割した場合は、まず頭の部分から抜き、次に根元の部分を抜きます。

7.抜いた場所の掃除

8.歯茎の縫合

かさぶたが出来ることは歯茎を治す重要な過程ですので、糸で傷口を縫う(縫合)ことでかさぶたができやすい環境にします。
穴が開いた箇所がかさぶたになり歯茎が盛ることで、治癒します歯を抜いた後の穴(抜歯窩)に細菌の増殖を防ぐための抗生剤・止血剤(白いスポンジ状のもの)を入れる場合もあります。
通常1~2週間後に糸を抜きます。

9.止血

抜歯後は15~30分程ガーゼを強く噛んでもらい、止血を行います。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は血が止まりにくいため、長めにガーゼを噛むようにご注意いただきます。

智歯の抜歯ナビゲーションから

●抜歯後の注意は?

1.出血について

親知らずを抜歯すると、歯が生えていた部分に穴が空きますが、この穴に血餅(ゼリー状のかさぶた)ができるまでは出血しやすい状態にあります。
抜歯後、清潔なガーゼを15~30分ほど噛んで頂き、血を止めていきます (圧迫止血) 。
抜歯を行った日は1日唾液ににじむ程度の出血は続きます。
また、飲酒や激しい運動、長時間の入浴など、血行がよくなる行為は出血を促してしまいますので、抜歯当日は控えるようにしましょう。
出血が気になって、親知らずを抜いてできた穴を舌や指で触ってしまう人がいますが、これはやめてください。
穴をふさぐ役割をする血餅が取れて、さらに出血する原因となってしまいます。
また、何度もうがいをするのもいけません。
うがいによっても、血餅が剥がれてしまうことがあるからです。
血餅が取れると治癒が遅れるだけでなく、傷口から細菌感染して炎症を起こすリスクもあります。

2.痛みについて

親知らずの抜歯後、麻酔が切れると痛みが出てくることがあります。
その際は、痛み止めの薬を歯医者さんに指示されたとおりに飲むようにしてください。
通常であれば、3日~1週間ほどで痛みはなくなっていきますので、必要以上に心配することはありません。
また、1か月は違和感が続くことがあります。

3.腫れについて

親知らずの抜歯後、頬や歯茎が腫れることがあり、抜歯後2~3日後がピークとなります。
腫れた場合は、抜歯当日のみ水で濡らしたタオルにて軽く冷やしてください。
ただし、冷やしすぎは、血行が悪くなり、かえって治りにくくなるため冷却ジェルシートや保冷剤等で冷やすのはやめましょう。
通常であれば、3日~1週間ほどで腫れは収まっていきますので、必要以上に心配することはありません。

4.お薬について

担当の先生の指示通り服薬してください。
万が一、薬を飲んで異常が出た場合には服薬を一旦辞め、担当医の先生に連絡してください。

●最後に

一度歯医者さんに行って、先生にどのように親知らずが生えているのか確認してもらい、抜く必要があるのか聞いてみましょう。

歯科医師 大野 真季

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噛める入れ歯の作り方

皆さま、こんにちは。
暑さ厳しい折、いかがお過ごしでしょうか。
朝夕は少し涼しくなり過ごしやすくなって来たように感じますが、夏の疲れが出てくる頃ですので、お体にお気をつけてお過ごしください。

今回は入れ歯の作り方についてお話させていただきます。
入れ歯は失った歯を補う治療法の1つとしてあげられますが、そもそも歯の喪失は、年齢が高くなるほど進み、高齢者では歯のない人が多くなります。
左下グラフは2016年に行われた全国調査(歯科疾患実態調査)における一人あたりの歯の数(一人平均現在歯数)を年齢階級別に示したものですが、高年齢層ほど値が低く
後期高齢者(75歳~)では、本来持っている歯の数(28本)の半数近くが失われています。
(後期高齢者で20本以上の歯を持つ人は46%です。)

右上グラフは歯の数の平均値を年齢階級別に示したものです。
1980年代以降は増加傾向にあります。
たとえば60歳前後(55~64歳)に注目すると、1975年では14本でしたが、2016年には24本まで増加しています。

〇義歯の使用率

以上のことより平均残存歯数は近年増加傾向にありますが、何らかの補綴物(ブリッジ・部分入れ歯・総入れ歯)を使っている人の割合は年齢とともに高く、後期高齢者では84%に達します。
義歯の種類別に内訳をみますと、歯の喪失が進むにつれて、ブリッジ→部分入れ歯→総入れ歯と、より大きな義歯を使用する状況が窺え、後期高齢者では約3割の人が総入れ歯を使用しています。

〇歯の補い方

失った歯の補い方の種類としては、ブリッジ、入れ歯、インプラントがあります。
保険内の治療であればブリッジや入れ歯、保険外であればインプラントで補います。
ただしブリッジや義歯は保険診療外のものもあります。
また2020年4月より、生まれつき永久歯が生えてこない先天性欠如歯が6本以上ある場合、公的医療保険適用の元、インプラント治療を受けることが出来るようになりました。

〇義歯の種類

全部の歯がない場合は全部床義歯、少数歯欠損の場合は部分床義歯を作ります。


      。

保険適応・適応外の義歯の違いに関しては当院のHPを参照ください。

義歯・入れ歯のページを見る 

〇全部床義歯の作り方

【口腔内診査】

適切な義歯の形態把握のためには解剖学的、生理学的知識が必要となります。

概形印象による研究用模型製作

既製トレーにて型どりを行います。
出来上がった模型を使用し上図の各解剖学的ランドマークを元に診査・診断を行い、義歯床外形を設計し、個人にあったトレーを製作することを目的に行います。

個人トレー

【精密印象、筋圧形成】

個人トレーにて、より精密に型どりを行います。
この型どりの際には患者さんに、頬や口唇、舌を動かしていただき機能運動時における入れ歯の形態を記録していきます。
これを筋圧形成または辺縁形成といいます。

〈筋圧形成の意義〉
義歯床辺縁位置や厚さなどを生体の筋活動に調和させるために行います。
無歯顎の場合には筋肉の動きは義歯の離脱に大きく関係し、可能な限り床面積を増やし最大限の吸着を得ることが必要となります。

【咬合床製作】

精密印象によって作業用模型が作られます。
この作業用模型上で咬合床という失われた咬み合わせを再構築する為の装置を上下顎に合わせて作ります。
この段階での粘膜部はレジンという堅い材料でできており(他種類あり)、後の咬合面に置き換わる部分は熱で軟らかく出来るワックスで出来ています。

【咬合採得手順】

①上前歯豊隆(リップサポート)の決定
②仮想咬合平面の決定
③咬合高径の決定
④下顎位の決定

入れ歯での咬み合わせの位置を決めていきます。
元々お使いの義歯があれば参考にする場合もありますが、1から義歯を作る場合はこちらで形態学的、生理的、機能的要素を加味した上下顎の位置を決めていく必要があります。
①では上の前歯の張り具合を決定し②では上の義歯の前方、側方から見た位置を決定し③では上下義歯の垂直的、④水平的な位置を決定していきます。
また作業を進めていく中でエラーが出ていないかワンステップごとに確認しながら行います。
エラーが出た場合は前ステップへ戻り修正を行います。
咬み合わせが定まれば、人工歯配列のための正中線(顔の真ん中を示す線)などの表示線を記入し、上下の咬合床が動かないように固定します。
以上で咬合採得は終了です。

【技工作業】

作業用模型および咬合採得で用いた咬合床を咬合器に取り付けて人工の歯を並べていきます。
咬合器を用いる目的としては、生体外で顎の位置や運動を再現し生体に調和した義歯作製をする為です。

人工歯の種類は、材質、色調、形態と大きさで分けられます。
材質の違いで陶歯、レジン歯、硬質レジン歯、金属歯等で分けられ、色調は皮膚、目、髪の毛の色を参考にします。
また形態や大きさなどは性別、個性、年齢を参考にし、人工歯排列を行います。

【試適】

完成前にワックスでできた仮の義歯を患者さんの口腔内に入れて実際に確認します。
義歯製作に際し、試適の段階で最も重要なものがリップサポートです。
次いで咬合平面、咬合高径、下顎位と言われています。

〔試適チェックポイント〕

・人工歯の選択が正しいか
・前歯部の排列
・咬合高径のチェック
・臼歯(奥歯)の排列
・水平的な咬合関係のチェック
・もう一度床縁の位置、辺縁形態のチェック

【完成】

【義歯調整】

まずは慣れるまで一週間ほどお使いいただき、痛みが出るようでしたら、強く当たっている部分などを削り、徐々にお口に合うよう調整していきます。

【メンテナンス】

3~4ヶ月に一度お口の中と義歯のメンテナンスをさせていただきます。

〇義歯のお手入れ方法

毎食後、義歯を外した状態で歯磨きを行い、入れ歯もお口の中と同様に入れ歯専用の歯ブラシまたは普通の歯ブラシを用いて清潔な状態を保つように
してください。
また寝るときは外していただき、清潔なお水の中で保存してください。
噛む力が強い方や、残っている歯に負担がかかってしまうような方など患者様によっては寝るときも義歯の装着をしていただくことがあります。
現在お使いの入れ歯に痛みがある、咬み合わせが悪い、食事中に動くなどの症状がある場合は歯科医師による調整が必要となりますので、お困りのことがありましたら一度歯科医院への受診をお勧めいたします。
また、快適に使用できていた入れ歯でも、使っているうちにすり減ったり、入れ歯を支える骨が減って粘膜と入れ歯の間に隙間ができるなど不具合が生じることがあります。
入れ歯は、歯科医師が定期的に調整を行うことで長く使用することができます。

本文の作成にあたり、東京医科歯科大学 高齢者歯科学 水口俊介教授はじめ多くの指導員の方より熱心なご指導を受け賜わりました。
有床義歯に関する基礎知識の再確認および臨床における正確な筋圧形成の会得の為の貴重な機会をいただき、心から感謝いたします。

歯科医師 小松リナ

(参考文献)
歯の喪失の実態 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp) 安藤雄一先生
・きちんと確実にできる全部床義歯の印象
・きちんと確実にできる全部床義歯の咬合採得
・きちんと確実にできる全部床義歯の試適・装着
・東京医科歯科大学歯科同窓会学術部 C.D.E 実習コース 参考資料より

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子供を虫歯にさせないためにできること

こんにちは。
色とりどりの紫陽花に、梅雨の訪れを感じる季節となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

6月4日は6(む)と4(し)の語呂合わせで「虫歯予防の日」と言われています。
今回は小児の虫歯予防についてご紹介させていただきたいと思います。

虫歯は、細菌因子、宿主因子、食餌因子の全て揃って発生すると言われています(Keyesの病因論)。
特に虫歯になりやすくかつ進行しやすい乳歯や幼若永久歯(生えて間もない、根っこが完全に出来上がっていない永久歯)の虫歯予防を図るためには細菌因子、食餌因子、宿主因子のそれぞれについて手段を講じる必要があります。

【細菌に関連する虫歯予防】

(1)ミュータンスレンサ球菌(虫歯菌)の伝播抑制
ミュータンスレンサ球菌は、多くの場合養育者を介して小児の口腔内に感染します。その後スクロール(ショ糖)を基質として粘着性グルカンを産生し、歯面に強固に付着することで定着します。
口腔内にまだ歯が生えていなければ、ミュータンスレンサ球菌が一時的に口腔内に存在しても定着することはないが、乳歯の数が多くなるに従って定着しやすくなります。
ミュータンスレンサ球菌がいつ定着したかは通常わかりませんので、歯が萌出したら保護者が歯ブラシを使って小児の歯を磨くようにしましょう。

(2)デンタルプラークの形成抑制
デンタルプラーク(汚れ)をそのままにしておくとエナメル質や象牙質の脱灰が生じやすくなります。
デンタルプラークをブラッシングやフロッシング、歯科医院での歯面清掃といった方法で機械的に除去し、成熟化を防ぐ必要があります。

口腔清掃(歯口清掃法)

・歯磨きをいつ行うか

歯磨きは三食の食事及び間食直後に行うことが望ましいですが、特に重要なのは夕食後です。
就寝時は唾液の分泌が低下するため、もしこの間にデンタルプラークや食物残渣が口腔内にあると、長時間唾液による自浄作用を受けることなく残存し、齲蝕の発生リスクが増大します。

・適切な歯磨き法

小児に適した歯磨き法としましては、簡単で、かつ歯面及び咬合面の施工除去効果が高いスクラビング法(以下で説明します)と呼ばれるものが推奨されています。
小児の成長や理解度によっては、操作の簡便なフォーンズ法を選択するのも良いとされています。

《スクラビング法》

〜スクラビング法の磨き方〜
1)歯ブラシの毛先を歯面に垂直に当て、歯肉辺縁部にも軽く接触させます。
2)近遠心的方向には、6mmほどのスクロールで往復運動します。
3)前歯部の口蓋・舌側歯面は歯ブラシを縦にして1歯ずつ小刻みに動かします。
4)咬合面は前後に小さく振動を与えて清掃し、最後方臼歯咬合面に毛先を十分到達させます。
5)1歯につき10回磨きます。

《フォーンズ法》

〜フォーンズ法の磨き方〜
唇(頬)側は上下の歯を軽く咬み、毛先を直角に当て、小さく縁を描くようにしながら磨きます。
舌側は前後に往復運動します。

・歯ブラシの選択と交換時期

毛が広がり始めたら交換するか、毛が広がらなくても1か月に一度くらいの割合で交換すると良いです。

・歯磨き粉について

近年市販されているほとんどの歯磨剤にはフッ化物が配合されており、ブラッシングの際に用いると齲蝕予防効果があるため使用が推奨されています。
年齢によって推奨されるフッ化物配合歯磨剤のフッ素濃度と使用量が異なりますので注意しましょう。

年齢 使用量 歯磨剤のフッ素濃度
歯の萌出時期〜2歳 切った爪程度の少量 500ppm(泡状歯磨剤であれば1000ppmでも可)
3〜5歳 5mm以下 500ppm(泡状またはMFP歯磨剤であれば1000ppmでの可)
6〜14歳 1cm程度 1000ppm
15歳以上 2cm程度 1000ppm

※MFP:モノフルオロリン酸ナトリウム

・フロッシング

虫歯のなりやすい隣接面の清掃は、歯ブラシだけでは十分ではないため、フロスの使用が極めて重要です。
デンタルフロスにホルダーがついたタイプは比較的扱いやすいので、是非使ってみてください。

・洗口法

水や薬剤を含む洗口液を口に含み、ブクブクうがいをして吐き出すこと洗口法と言います。
近年はデンタルリンス(マウスウォッシュ)も市販されていますが、歯磨きの補助的手段にすぎず、小児への使用には界面活性剤やアルコールを含む製品も多いため注意が必要です。

【食事・生活習慣に関連する齲蝕予防】

〜Stephanカーブ〜

糖質を含む食品を摂取すると、歯面上の最近によって酸が産生され、pHが低下します。
歯の表面は酸性環境になり、エナメル質の脱灰が生じます。
その後一定時間をかけ、唾液の緩衝作用、自浄作用によりpHが中性の状態に戻ると、エナメル質表面では再石灰化が起こります。
歯は脱灰と再石灰化を繰り返して健全に維持されていますが、生活習慣の状況によっては、歯が酸性環境にある時間が長くなって齲蝕が発生しやすくなります。
ダラダラ食べ(常にだらだらと時間をかけて食べ続けること)をしていると脱灰時間が長くなり、再石灰化が追いつかず、虫歯ができやすくなります。
だらだら食べは控え、時間を決めてメリハリをつけておやつやご飯を食べるようにすると良いですね。

【歯に関連する虫歯予防】

(1)フッ化物の利用

フッ素は歯の表面のエナメル質の結晶構造を変化させ、酸による脱灰を抑制することができるために広く利用されています。
乳歯や幼若永久歯は成熟永久歯と比べて、構造が未熟なため、耐酸性に劣りますが、フッ素を取り込みやすいです。

1)フッ素配合歯磨き剤

フッ化物配合歯磨剤の予防効果を十分に発揮させるためには適切な量の歯磨剤を用いて、歯磨き後のうがいは10-15mlの水で1回うがいをします。その後1―2時間は飲食を控えます。特に就寝前に使うと効果的です。

2)フッ化物歯面塗布

歯科医院で高濃度のフッ素を歯に直接塗布する方法です。
萌出直後の歯に対して行うのが最も効果的と言われています。
虫歯に最も罹患しやすいのは歯が萌出してから1年6か月までであると言われているため萌出直後からフッ化物歯面歯面塗布を実施する必要があります。
これは、萌出して間もない歯は、反応性が高く、フッ化物塗布による歯の表層へのフッ素の取り込み量が大きいからです。繰り返し塗布することで効果が持続します。

3)フッ素洗口

4歳以降からフッ素洗口液でブクブクうがいをする方法です。

(2)シーラント

虫歯になりやすい溝を事前に埋めてその部分の虫歯の発生を防ぐ方法です。
特に萌出直後の幼若永久歯は、エナメル質の溝の形態が複雑で深いことから、フッ化物歯面塗布と併用してシーラントを行うことによって高い齲蝕予防効果が期待できます。
しかしながら、シーラントはかけてしまったり取れてしまう場合がありますので、定期的に歯科医院でのチェックを行う必要があります。

今回は子供の虫歯予防についてご紹介しました。
お子様が何歳であっても歯は食べることに直結する大切な組織ですので、今からできることを始めていきましょう。

歯科医師 丹羽 佳世子

参考文献
小児歯科学ベーシックテキスト 第2版 永末書店

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顎の病気~特発性下顎頭吸収~

こんにちは。
4月も下旬になりを過ぎ夜は肌寒い日もあり、日中は汗ばむような陽気の日も増えてきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
季節の変わり目や環境の変化、精神的なストレスにより、無意識に食いしばってしまい顎が痛くなりやすい時期でもあります。

さて、今回はそんな顎に症状を呈する病気「特発性下顎頭吸収」についてご紹介させていただきます。
今まで分からない事が多かった疾患ではありますが、少しずつ研究が進み原因が解明されています。
また、この病気に関連する疾患についてもこれを機に皆様にお伝え出来ればと思っております。

・特発性下顎頭吸収とは

成長期にも関わらず下顎頭の著しい吸収・変形が生じ、下顎枝窩の減少が生じる極めて稀な病態です。
無痛性に進行することが多く、下顎枝高径の短縮に伴う下顎骨の後退や二次的全歯部開咬が顕著になって初めて歯科を受診することも少なくないです。

2009年に難治性疾患に認定され、発生機序や原因については不明な点が多いですが、下顎頭吸収の進行を回避し重症化を防ぐためには、突発性下顎頭吸収を正しく鑑別する知識と検査体制の確立が不可欠です。

・原因

未だ不明な点が多いですが、性別、年齢、ホルモン異常などの内的因子に加え、顎離断術、顎顔面外傷、顎関節円板障害、口腔習癖などの外的因子が必須条件になっていることが明らかになってきています。

・内的因子

10代、20代の女性に多く発現します。
特発性下顎頭吸収の発現に関する重要な因子として17βエストラジオール(エストロゲンを構成する主要成分の一つで妊娠、出産との関わりが強い)の血中濃度の低下が挙げられます。
さらに、女性の顎関節にはエストロゲン受容体が多く存在し、エストロゲンの分泌低下が関節組織に負の影響を与えている可能性があると言われています。

・外的因子

特発性下顎頭吸収の発症に関連が深い外的因子には、外科的矯正治療経験、顎顔面外傷、顎関節円板障害、口腔習癖などが挙げられます。
外科的矯正経験については、下顎頭吸収を発症した患者の多くが顎離断術を経験しています。

~顎関節疾患~

特発性下顎頭吸収以外にも顎関節に症状を呈する疾患はいくつかあります。
外傷や炎症、腫瘍、顎関節症がありますが、今回は内的因子やホルモンに関係のある先天障害・発育障害についてご紹介させて頂きます。

【先天障害・発育障害】

①無形成、減形成
顎関節の無形成または減形成は、下顎の減発育または不全発育の一症候です。
隣接する器官(中耳、外耳、下顎骨)の形成不全も合併して発現することが多いです。

②第一・第二鰓弓症候群
第一鰓弓と第二鰓弓由来の骨と軟組織の異常を主な症状とする先天性の形成異常症候群です。
症状の現れ方に程度の差があります。
ほとんどが片側性で、下顎骨の減形成、顎関節の形成不全、咬筋・側頭筋の形成不全、表情筋の麻痺が見られます。
耳介の変形、すなわち小耳症、副耳が見られます。

③Treacher-Collins症候群
第一鰓弓由来の器官の発育不全による障害です。
上顎骨、頬骨ならびに下顎骨の発育不全が見られます。
これに伴って顎関節突起、筋突起の形成不全が現れます。
さらに合併症として眼瞼および耳介などの変形が出現します。

④Goldenhar症候群
眼球類皮腫などの眼の異常を伴った第一・第二鰓弓症候群の亜型で、脊椎の奇形を合併します。

⑤関節突起肥大
下顎頭の後天性の過剰発育で、非腫瘍性病変です。
原因不明で、外傷、脱臼または炎症などが刺激因子になると考えられています。
関節突起肥大は片側性に発症し、患側の下顎の伸長により咬合不全ならびに顔貌非対称となります。
顎関節に雑音、仏痛、下顎頭の運動障害に起因する開口障害が現れることがあります。

【顎関節の外傷】

①外傷性顎関節炎
下顎骨に衝撃的な外力が負荷され、下顎頭に強い外力が及ぶと顎関節の軟組織構造が炎症状態を引き起こすことがあります。
顎関節の自発痛または運動時として自覚され、仏痛に伴う防御反応によって開口障害が起こります。
下顎の健側偏位によって咬合不全が生じます。

②顎関節脱臼
過剰な関節運動の結果、骨性構造が関節の可動範囲を逸脱し、復位出来ず偏位状態で固定することをいいます。
顎関節では下顎頭の過剰な前方滑走運動によって関節隆起を前方に逸脱し復位できなくなり開口状態となり固定した状態、いわゆる顎が外れた状態です。

脱臼しやすい解剖学的な特徴があると発生しやすいと指摘されています。

③関節突起骨折
関節突起部に発生する骨折の下顎骨骨折全体に占める割合は比較的大きいです。
関節突起骨折では、オトガイ部など下顎の他部位に作用した外力が伝導し二次的に関節突起が骨折する頻度が高いです。

【炎症性病変】

①化膿性顎関節炎
下顎骨炎または骨髄炎からの波及により化膿性顎関節炎が発症することが多いです。
全身症状として、発熱、頭痛、全身倦怠などが現れます。局所症状としては、耳前部の自発痛、特に顎運動時の痛みが強いです。
進行すると外耳道部に瘻孔を生じ、排膿することがあります。
関節腔に膿や浸出液の貯留がみられたり、関節内組織の浮腫性腫脹によって下顎頭が前方に押し出され、下顎全体が健側へ偏位するので咬合不全の状態となります。

②リウマチ性顎関節炎
全身の関節に炎症性病変が急性期と慢性期を反復し、長期にわたって関節構造が徐々に破壊される病変です。
全身的な結合組織の炎症性疾患として顎関節にも症状を現します。
顎関節の運動痛、顎関節部の圧縮が見られます。また、咀嚼筋群のこわばり感が現れます。
下顎頭の変形、骨の破壊、吸収、萎縮が現れ、開口障害が顕在化し、晩期においては顎関節強直症の状態となります。
下顎頭の吸収破壊に伴って下顎が後上方へ偏位して前歯部開咬などの咬合不全を示すことがある。
全身的には、発熱、全身倦怠、食欲不振、体重減少がみられます。

③変形性顎関節症
顎関節の関節円板および下顎頭関節面の繊維軟骨構造、関節隆起関節面の繊維軟骨様構造の破壊が生じる病変です。
日本では、本疾患を顎関節症Ⅳ型に分類されています。
この疾患は加齢に伴う軟骨や骨の代謝低下、低位咬合による慢性の外傷性因子などが増悪因子とされています。
顎運動時の顎関節雑音(クレピタス音)、関節痛並びに開口障害が主な症状となります。

・最後に

特発性下顎頭吸収は、発症要因についても危険因子についても未だ不明な点が多く、早期発見につながるような診断基準はありません。
また、発症後の対処法として、どのような治療法が最善であるかについても統一した見解はありません。
しかし、歯科を受診することで早期発見が出来ますので歯科検診にいらして下さい。

歯科医師 瀬津昂斗

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歯がしみるメカニズム

皆さまこんにちは。
3月になり朝晩はまだ寒い日もありますが、日中は日差しが春らしくなってきましたね。
季節の変わり目で、体調を崩される方も多いようです。
うがい手洗いなどをしっかりして、体調管理にお気をつけてお過ごしください。

歯がしみる経験をしたことはありますか?

冷たい物や温かい物を食べた時、歯ブラシの毛先でこすったときなどに起こったことがある方もいるかと思います。
今回は、歯がしみる痛みのメカニズムの一説を、最新の知見を踏まえてご紹介させていただきます。

まず、歯がしみる痛みを理解するためには、歯の構造を理解する必要があります。
歯は表面から順に、歯冠部ではエナメル質→象牙質→歯髄、歯根部ではセメント質→象牙質→歯髄で構成されています。(図1)
それぞれ簡単に説明すると、

・エナメル質:人体で最も硬い組織で、厚さは2~3㎜
・象牙質:動物界に共通して存在する組織で、生物が持つ歯としての必須条件
・セメント質:骨と同じような組成・硬さの組織
・歯髄:種々の細胞(神経細胞の末端、線維芽細胞、未分化間葉細胞など)や血管、その他コラーゲン線維などが存在する柔らかい組織であり、所謂「神経の部屋」

となります。

図1(https://www.lion-dent-health.or.jp/labo/article/knowledge/01.htm

象牙質の表面には象牙細管と呼ばれる無数の穴が開いており、その穴は管となって歯髄に到達しています。(図2)
この象牙細管内は、組織液という液体で満たされています。
虫歯、歯ブラシによる摩耗、歯ぎしりによる咬耗などにより、エナメル質およびセメント質がなくなると象牙質が露出します。
むき出しになって穴だらけの象牙質に、甘いものや冷たいもの、歯ブラシ、空気などの刺激が加わると、鋭い痛みが生じます。
これが、歯がしみる痛みです。

図2(https://systema.lion.co.jp/shishubyo/glossary/c_chikakukabin.htm

では、神経の通っていない象牙質表面に刺激が加わっただけで痛みが生じるのはなぜでしょうか?
その謎を説明するのが、動水力学説(hydro dynamic theory)です。
先ほども述べましたが、象牙質表面には組織液で満たされた象牙細管の入口が開いています。
象牙質表面への刺激は象牙細管内に浸透圧差を生じ、これにより象牙細管内の組織液が移動します。
そして浸透圧差により移動した組織液の流れが、歯髄に存在する神経を刺激して痛みとなるのです。(図3)
たとえば、チョコレートを食べたときは、チョコレートに含まれる糖分により象牙質表面の浸透圧が高張となり、象牙細管内の組織液は表面側に引っ張られ、痛みが生じるのです。

図3(https://www.lion-dent-health.or.jp/labo/article/trouble/03.htm

また最近では、象牙質と歯髄の間に存在する象牙芽細胞(odontoblast)という細胞が、浸透圧差により移動した組織液の流れを感知し、さらにその情報を神経に伝達することが示されつつあります。
これを、象牙芽細胞‐動水力学受容体モデル(Odontoblast receptor hydrodynamic model)と言います。(図4)

図4(歯界展望vol.138 No.6 p.1123 澁川ら)

では、神経細胞や象牙芽細胞がどうやって組織液の流れを感知するのでしょうか?
それは、細胞の表面(細胞膜)に存在するイオンチャネルという名前のタンパク質が担っています。(図4)
イオンチャネルは普段は閉じていますが、様々な刺激(温度、酸、細胞膜変形、薬など)により開きます。(図5)
イオンチャネルが開くと、ナトリウムイオンやカルシウムイオンなどのイオンが細胞内に流入します。
このイオンが電気信号となり、脳まで痛みの信号を伝導・伝達するのです。

図5(https://www.biophys.jp/highschool/A-10.html

歯がしみる痛みでは、TRPチャネルおよびPiezo1チャネルという種類のイオンチャネルが、組織液の移動による細胞膜の変形を感知しています。(図4)
ちなみに、TRPチャネルおよびPiezoチャネルの発見は2021年のノーベル医学・生理学賞にも選ばれています。

2021年ノーベル医学・生理学賞の受賞者、デービッド・ジュリアス博士(左)とアーデン・パタポティアン博士(右)
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2021/summary/

難しい部分もあったかと思いますが、歯痛の理解には欠かせない話ですので、ご説明させていただきました。
今回の記事が少しでも歯痛に関する理解への一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯科医師 倉島竜哉

参考文献
・組織学・口腔組織学 第4版 わかば出版
・基礎歯科生理学 第7版 医歯薬出版
・歯科展望 vol.136 No.6 2021-12 医歯薬出版
・保存修復学 第5版 永末出版

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歯周病と喫煙の関係性

皆さまこんにちは。
今年は東京でも積雪があり、例年よりも寒い日が続いていますが体調などを崩されていないでしょうか?
空気もとても乾燥をしていますが、空気が澄んでいるこの時期は、雪化粧をした富士山が都内からでもとても綺麗に見えて心が和みます。
コロナはまだまだ続き落ち着かない日々ですが、お風邪を引かれてませんようお気をつけてお過ごしください。

本日は歯周病と喫煙の関係性について、少しお話しさせていただこうと思います。
現在歯周病は 30 歳以上の成人の約 80%がかかっていると言われています。
さらに驚くことに、人類史上最も感染者数の多い感染症として 2001 年にギネス記録に登録されており、20年経った現在もその記録は破られていません。

歯周病って?

名前は聞いたことがあるけれど、実際どんな病気なのかあまりご存じない方も多いのではないでしょうか?
はじめに、簡単ではありますが歯周病について説明したいと思います。
歯周病は歯周組織に生じる炎症性疾患の総称です。
歯周組織とは歯の周りの歯ぐき(歯肉)や歯を支える骨(歯槽骨)などのことを指します。
歯周病になると、歯肉の辺縁が炎症を引き起こし赤くなったり腫れたりします。
さらに進行すると、膿がでたり歯槽骨が吸収していき歯が動揺してきて、最終的には歯を抜かなければならなくなってしまいます。

歯周病の原因

歯周病の原因はひとつではなく、細菌因子・宿主因子・環境因子がそれぞれ影響しあって発症する多因子性疾患とされています。

①細菌因子

お口の中には 700 種以上の細菌がいます。
このうち歯周病の発症・進行に関与するとされる細菌を歯周病原菌細菌とよびます。
歯ブラシが充分でなかったりすると、この細菌たちが粘着性の物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。
これがいわゆる歯垢(プラーク)です。
これは、とても粘着性が強いのでうがいをした程度では落ちません。
また、特定の歯周病原細菌がもつ酵素は歯周組織を直接的に破壊するといわれています。

②宿主因子

宿主とは細菌に寄生されるもの、すなわち患者さんご自身の身体のことです。
これには、お口の中のことが原因とされる局所的因子と年齢、性別、体質、全身疾患が原因となる全身的因子があります。

③環境因子

歯周病は生活習慣病の1つとされ、歯周病の発症・進行には、喫煙、ストレス、食生活(栄養状態)などが影響を与えます。

歯周病と喫煙

環境因子の中では喫煙は歯周病の発症や進行に影響を与える最大のリスクファクターであるとされています。
喫煙は、全身の臓器に大きな影響を及ぼし、がんや心臓血管疾患、慢性閉塞性肺疾患など歯周病だけでなく、多くの生活習慣病の重要なリスクファクターとなり
ます。
タバコの中には、数千もの化学物質が含まれていて、そのうちニコチン、タール、一酸化炭素の最大有害物質をはじめ 200 種類以上の有害物質が含まれており、60 種類以上の物質に発癌性があります。
喫煙者は口臭、ヤニによる着色だけでなく、歯周病にかかりやすく、重症化しやすいので、治療しても治りにくいことがわかっています。

喫煙がお口に与える影響

喫煙により有害物質にさらされる最初の臓器はお口の中です。
ニコチンは、皮膚や粘膜に素早く吸収され、血管収縮を引き起こし、血流の減少が起こる結果、歯肉は酸素が少ない状態になり、歯周ポケット内に歯周病原細菌が生活しやすい環境になってしまいます。
さらに、ニコチンは体の免疫機能も狂わせるため、喫煙をしない人と比べて喫煙者は歯周病の治療をしても治りにくくなってしまいます。

喫煙者のお口の中の特徴として、着色、歯肉の黒色化(メラニン沈着)、口臭、歯肉が硬くなる、味覚低下が代表的なものとしてあげられます。
しかし、喫煙者では歯肉の腫れや出血などの炎症兆候が見た目以上に抑えられ、歯周病の初期症状を患者さんご自身が気づかず、加えて非喫煙者と比べて進行が速いため、重症の歯周病になって初めて気づくケースも少なくありません。
また、歯周病だけでなくインプラント治療や口腔がんにおいても大きなリスクファクターとなることがわかっています。

禁煙の効果

現在、歯周病のみならず全身疾患への対策として禁煙の必要性がうたわれています。
実際、国によって、喫煙に関する目標値も定められています。(健康日本 21)
禁煙することで、歯周組織は本来の免疫機能を取り戻し、歯肉は本来の健康的な状態になります。
そしてなにより、お口の中の健康だけでなく、全身の健康にとっても大きな病気にかかるリスクを減らすことができます。
禁煙をすることは簡単なことではありませんが、専門家による禁煙サポートや周囲の人の力を借りてぜひ禁煙にチャレンジしてみてください。

参考文献
臨床歯周病学 第3版
https://www.jacp.net/perio/about/

歯科医師 西村仁希

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味がわからない
~味覚障害の原因・治療~

皆さま、こんにちは。
10月も半ばを過ぎ、朝晩は徐々に肌寒い日も増えて参りましたがお変わりはないでしょうか?
日中はさわやかな風が心地良く、すすきやコスモスに秋の風情を感じる季節となりました。
一日の気温差が大きい日もありますので体調を崩さないようにお気を付けください。

連日の新型コロナウィルス感染症に関する報道にて、初期症状や後遺症にて味覚障害が発現されることを耳にされたことがあると思います。
今回はこの味覚障害に関するお話しをさせていただきます。
味覚の仕組みについては過去の記事をご覧ください。

https://www.chiyoda1st.com/2020/03/味覚の仕組み.html

味覚障害は障害部位別、原因別、症状別に分類されます。

〇障害部位別分類

味を感じるプロセスとして味覚はまず、食べ物に含まれる味物質(化学物質)が私たちの口の中に入り、舌に触れるところから始まります。
舌の上や側面には、乳頭と呼ばれるざらざらとした多数の突起があり、そこに味物質を感知する“味細胞”が集まっています。
味細胞の表面には味覚受容体が存在し、味物質を受け取ると、その情報は味細胞の内部をリレーし電気信号に変換されます。
さらに信号が神経細胞を通り、大脳に伝えられることで私たちは味を認識することができます。

このプロセスのどこかしらに不具合が生じることで味覚障害が発現します。
味覚の障害部位の分類から分岐し、原因別に分類されます。

〇亜鉛欠乏性味覚障害:

味覚の受容器である味細胞のターンオーバー(代謝)には微少元素である亜鉛(Zn)が関与しています。
亜鉛が低下することで正常な味細胞の発生が遅れ味覚障害を生じます。
さらに以下に分類されます。
ⅰ)食事性味覚障害 食事摂取量や偏食が原因と考えられるもの。
ⅱ)薬剤性味覚障害 降圧剤や精神安定剤などの副作用によるもの。
ⅲ)全身疾患性味覚障害 腎不全や肝不全などの疾患が原因のもの。

1. 下記の症状/検査所見のうち1項目以上を満たす
1) 臨床症状・所見 皮膚炎,口内炎,脱毛症,褥瘡(難治性),食欲低下,発育障害(小児で体重増加 不良,低身長),性腺機能不全,易感染性,味覚障害,貧血,不妊症 2) 検査所見  血清アルカリホスファターゼ(ALP)低値 注:肝疾患,骨粗しょう症,慢性腎不全,糖尿病,うっ血性心不全などでは亜鉛欠乏であっても低値 を示さないことがある.
2. 上記症状の原因となる他の疾患が否定される
3. 血清亜鉛値 3-1:60µg/dL未満:亜鉛欠乏症 3-2:60 ~ 80µg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏  血清亜鉛は,早朝空腹時に測定することが望ましい
4. 亜鉛を補充することにより症状が改善する
(亜鉛欠乏症の診療指針2018より)

〇突発性味覚障害:

血清亜鉛値は正常値であるにも関わらず原因が明確ではないもの。

〔局所的原因〕

・不適合補綴物(詰め物、かぶせ物)
異種金属の詰め物同士が接触すると微少電流が流れ、味覚障害を発現することがありま
す。
このような場合は金属アレルギーの検査を行うと共に原因となる補綴物を撤去する必要があります。

・味孔閉鎖
舌の上の汚れ(舌苔)などにより味孔が閉鎖し、味物質が味細胞に到達しないために起こります。
舌苔を確認し、定期的に舌ブラシを用いて機械的に清掃してください。

・舌炎
舌炎を発症すると味蕾が障害されて味覚障害を起こします。
代表的なものとしては不潔な義歯の使用や抗菌薬の長期投与あるいは免疫不全によって生じる真菌の一種であるカンジダ菌が感染して生じる口腔カンジダ症があります。
液検査や培養検査を実施し口腔内の清掃や抗真菌薬の処方を行います。

・嗅覚機能低下
感冒(かぜ)、花粉症などの鼻疾患により嗅覚の低下が原因となる味覚障害。
血液検査、 アレルギー検査を行い味覚由来の障害と区別する必要があります。
まずは鼻疾患の治療を行い、治癒後に味覚症状が改善されない場合は味覚検査を行う必要があります。

・神経損傷
口腔内外領域の手術時における神経損傷によりおこる味覚障害。
味覚検査と共に知覚検査を行う必要もあります。(障害部位によって全身的原因にも含まれます。)

・放射線治療後
舌癌や歯肉癌などの口腔がんや咽頭がんの多くは扁平上皮癌でしばしば放射線療法が行われます。
この際の副作用(急性障害)として重篤な口内炎や味覚障害が起こります。
これらの症状は数か月で緩和されると言われています。

〔全身的原因〕

・唾液分泌障害 口腔乾燥症
 シェーグレン症候群、薬剤性、咀嚼能力低下、加齢、放射線治療後の機能障害などによる唾液分泌量の低下が原因となるもの。
唾液分泌量、涙液分泌量、血液検査が必要となります。

・貧血
 悪性貧血によるHunter舌炎や鉄欠乏性貧血による平滑舌などが原因で生じるもの。 
 血液検査を行います。

・心因性
 うつ病やヒステリーなどによる精神疾患が原因とされるもの。
服用薬剤の問診や心療内科との連携が必要となります。

味覚障害が起こるとどのような症状が起こるのか?症状別分類を下記に示します。

①味覚減退:食べ物の味が本来よりも薄く感じる。 
 
②自発性異常味覚:口腔内に食べ物がないにも関わらず、常に味がする。
③味覚消失:4基本味全て感じない。
④解離性味覚障害(孤立性無味症):4基本味のうち特定の味が消失している。
⑤異味症:食べ物本来の味と異なる。
⑥味覚錯誤(錯味症):特定の味を他の味と間違える。
⑦味覚過敏:食べ物本来の味より濃く感じる。
(*片側性無味症:舌の左右いずれか一側で味を感じない)

電気味覚検査…舌の味覚の伝達に関与する神経の障害部位を特定する目的で行う。

ろ紙ディスク法…支配神経別の障害部位の特定、解離性味覚障害などの特定の味がわからない味覚障害の検査も可能。

〇治療法

味覚障害の多くはその発症に亜鉛欠乏症が関わるため治療の第1選択は亜鉛補充療法が適用になります。
現在日本で認可されているポラプレジンク(プロマック)や酢酸亜鉛製剤(ノベルジン)の2種類が治療薬として処方されています。
また亜鉛の低値が認められない場合においても基礎疾患(慢性肝疾患、糖尿病、腎不全など)の所見・症状が改善する報告があるため亜鉛補充を考慮してもよいと〔亜鉛欠乏症の診療指針2018〕に記載がありました。
その他の味覚障害の治療法に関しては第1に原因の除去、生活指導、内服薬、漢方や外用薬の投与が検討されます。
例えばドライマウスの原因となる薬剤を使用している場合は中止あるいは減量、他剤への変更が可能か主治医や薬剤師と相談して検討する必要があります。
生活指導に関しては食べ物をしっかり咀嚼し、唾液分泌を促進することで唾液腺の機能を保持、改善できることを知っていただき、歯周病やう蝕の予防にも効果的であることを理解していただければなお良いと思います。

〇まとめ

味覚障害を生じると食の楽しみが減るだけではなく、食欲不振から栄養不足になったり味付けが濃くなるため、塩分や糖分を過剰摂取してしまい、栄養障害の危険性も高くなります。
味覚障害は歯科で対応できる場合もありますが、全身疾患が原因となることも多くある為、耳鼻咽喉科・内科・心療内科など他科との連携が大切になってきます。
以前と比較して味を感じにくくなった等でお困りの方がいらっしゃいましたら一度ご相談ください。

今回は一般的な味覚障害の原因や治療法についてお話させていただきました。
まだまだ未解明の部分も多い分野ですが、新型コロナウィルスによる味覚障害のメカニズムに関しても徐々に解明され始めています。
3月29日新型コロナウイルスの口内感染(3月25日 Nature Medicine オンライン掲載論文) | AASJホームページ
今後さらに研究が進み、新たな治療法が確立されることを願います。

歯科医師 小松 リナ

(参考文献:口腔内科学 第1版、基礎歯科生理学 第5版、耳鼻咽喉科・頭頸部外科91巻12号)

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歯内療法の極み〜歯内療法専門医・吉岡先生からのご寄稿〜

皆さまこんにちは。
今回は「歯を抜きたくない、なんとかして残したい!」と切に願った時の救世主とも言える、歯内療法専門医についてのお話しをさせていただきます。
一般歯科医院において対応できない難症例に遭遇した場合、より精度の高い診断および処置を行って下さるのが歯内療法専門医です。
そこで、今回は我々が大変お世話になっている歯内療法専門医の吉岡隆知先生に「歯内療法の極み」について執筆して頂きました。

吉岡隆知先生プロフィール

略歴

1991年 東京医科歯科大学歯学部卒業
1996年 東京医科歯科大学大学院修了 博士(歯学)
1996年 東京医科歯科大学歯学部付属病院医員
1997~2000年 日本学術振興会特別研究員
2000年 東京医科歯科大学助手
2007年 東京医科歯科大学助教
2010年 吉岡デンタルオフィス開業

主な所属・役職

東京医科歯科大学非常勤講師(2010年~)
日本歯科保存学会 専門医・認定医
日本歯内療法学会 専門医
Zeiss 公認インストラクター
医療法人社団白群会理事長
株式会社Toppy 代表
歯内療法症例検討会代表

歯内療法の極み
吉岡デンタルオフィス
吉岡隆知

1. はじめに

 歯の根の治療を受けたことのある人は少なくないと思います。
歯の中をやすりのようなもので掃除する、等と言われて治療をしているはずです。
治療のために何回か通院が必要で、中には何ヶ月もかかっているかも知れません。
痛みが取れない、なかなか良くならない場合もあるでしょう。根の治療のことを「根管治療」と言います。日本では、保険治療での治療費が安いために根管治療はきわめて多く行われています。
安易に、と言ってもよいかも知れません。
海外では、ほとんどの国で根管治療は高価格です。根管治療になるような歯は抜歯されることもあるようです。
日本の根管治療数は世界一と言っても過言ではないと思います。
たとえばトルコでは根管治療した歯は一人あたり0.41本であるのに対し、日本では5.4本と、約13倍違います。
調査対象とする患者層が同じではないので、断定的なことはいえませんが、日本は世界的にも根管治療はやり過ぎと見られています。

 むし歯が大きくて神経をとるようになったり、以前の治療が良くないので、やり直したりすることがありますが、どちらも根管治療です。
ネットでは「根幹」治療と書かれたりしていますが、「根管」が正しい表記です。
歯の中には神経や血管が入っている細い管のようなものがありますが、それが根管です。
下の写真が根管の一般的な形態です。
歯を酸に入れて軟らかくしてから特別な処理をすると、このように透明になって根管を観察できます。
根管にはインクなどをいれて見やすくしています。
これらの複雑な根管に対して行われるのが根管治療です。

 歯科の病気というと、むし歯と歯周病はどなたでも聞いたことがあると思います。
治療は、むし歯を削って穴を補修すしたり、歯石を取ったり、あるいは治療後のメンテナンスをしたりします。
それ以外に親知らずなどを抜歯することもあるでしょう。ところが、根管治療のことはあまり有名ではないようです。
根管治療では根管の中を隅々まで綺麗に洗って(根管形成・根管清掃)、根管の空間を密封します(根管充填)。言葉で説明すればこれだけなのですが、根管の形態が複雑すぎて難しい治療になっています。歯科医師が治療するときに歯・根管の位置を誤認することも少なくありません。口が開かない、歯の向きなどにより、器具を入れること自体が困難な場合もあります。根管治療は言葉で説明する以上に難しくなります。
根管の処置は100%完璧に行われなくても、臨床的に問題にならない程度に行われれば治るのですが、それが達成できたことを客観的に判定する方法はありません。
治療の目標がわからないです。
症状はなくなっても、根管の清掃が終わっていないと根管充填できないし、根管充填していないとかぶせる治療に進めません。
根管治療では、使用する器材が話題になることがあります。
現代の根管治療にとってCBCTとマイクロスコープは外すことの出来ない装置です。
CBCTとは歯科用のCTで、極めて高解像度で歯と周囲組織の立体的な画像を提供してくれます。歯の治療というと、歯だけ見れば良いと思われるかもしれませんが、歯の根の周りの骨の情報も重要です。
通常のX線写真ではわからないものもCBCTでは明らかにしてくれます。
CBCTも様々な機種があるのですが、根管治療では高い解像度の装置で、最もよい条件で撮影すべきです。
得られた画像で診断が変わるからです。そして、根管形態は最高解像度のものでやっと見えるくらい細かいのです。
根の周りの影が歯の破折によるものか、炎症によるものかの診断で歯を残せるか抜歯になるか、結果が変わってきます。
CBCTの結果に基づいてマイクロスコープで見ながら治療をします。
マイクロスコープとは実体顕微鏡のことです。
マイクロスコープにも機種の違いはあるのですが、CBCTほどではないです。
それよりマイクロスコープで何を見るかが重要です。
マイクロスコーブを誰が使うかで結果が変わってきます。
CBCTで見える根管を見つけるために細く深く削っていかなければならないことがあります。
CBCT画像の解釈とその後のマイクロスコープでの治療には、そこに根管があってもおかしくないと判断する解剖学的な知識が必要になります。
例をお見せします。
初診時のCBCTです。
黄色矢印は前医により治療されていた根管です。赤矢印は発見されていなかった根管です。

この歯をマイクロスコープで観察します。
発見されてない根管は赤矢印の部分にあります。この矢印の部分を削っていくのは、経験がないと、怖いと思います。
別なところに穴をあけてしまうのではないか、と考えて、かなり躊躇すると思います。たしかに位置がずれてしまうと大変なことになります。

適切な方法で削っていくと、黄色矢印のように根管が見つかり、処置が出来ます。

 根管治療で全ての問題が解決するわけではありません。
頻度は高くありませんが、治らない、あるいは治療後に再発する症例はあります。最初の根管治療がきちんとできていないと、再発する率は高くなると考えられます。
そのような場合には手術(逆根管治療)が行われます。
手術というと、患者さんはとても嫌がります。
成功率が高く治療回数も1回ですむので、かえって楽なのではないかと思うのですが。
手術では麻酔後に歯肉の中の病変部を取り除き、根の先からセメントを詰めます。

 いわゆる膿の袋(歯根嚢胞)や複雑な根管形態が原因の場合に逆根管治療は有効です。
手術をせずに根管治療をやり直してもこれらに対処できません。
また、根管治療をやり直さなければならない場合、かぶせた歯を除去せずに逆根管治療を行うこともできます。
きれいな歯を入れたあとで歯が痛くなったり腫れてきたりすることがあり、逆根管治療で対応できることが多いです。
患者さんにとっても歯を作った歯科医師にとっても良い方法だと思います。
根管治療は、歯内療法という分野の一部門です。歯内療法には次の様な内容があります。

・痛みをとる
・原因歯を特定する
・歯の神経を守る(可逆性歯髄炎)
*守り切れない神経は除去して根管治療をする(抜髄)
*神経が死んでしまった場合も根管治療をする(感染根管治療)
*以前の治療が良くない場合にやり直す(再根管治療)
・治療した歯に不具合が生じたときに、その歯を救う(再治療、逆根管治療)
・むし歯や歯周病以外の歯の病変に対処する(歯根吸収、セメントーマなど)
・他院では抜歯と言われた歯でも何とかする
・ぶつけたりした歯を維持できるようにする
など

このうちの*をつけたものが根管治療です。
このような歯内療法を専門に治療するのが歯内療法専門医です。
歯を残したいと思ったら、歯内療法専門医に相談していただければ1番良い方法を提案してもらえると思います。
抜歯と宣告されたときに本当に抜歯しなければならないかどうか、ご相談ください。
他院で残すのは無理、と言われた歯でも残せる場合があります。

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非歯原性歯痛

夏の日差しが眩しく耐え難い暑さが続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
無観客での開催が決定した東京オリンピックからもまだまだ目が離せません。
このような状況下ですが、試合に出ている選手たちの姿を見ると勇気を貰います。

・非歯原性歯痛とは

 非歯原性歯痛とは、歯が原因ではなく生じる歯痛のことです。
歯が原因ではないため、なかなか症状が治らないまま歯科治療が長引いてしまうと、慢性化してしまい治りにくくなるので早い段階での診断が重要となってきます。

 コロナ禍において、日々の日常で不安やストレスにより症状が悪化し、歯痛を主訴に来院される方が増えてきています。
 この疾患で来院される方は、根管治療や伵合治療、抜歯をしたが痛みが続くなどを訴え来院される事が多いです。

・原因

 非歯原性歯痛の種類は数多くありますが、発生機序は現時点で以下の3項目が考えられています。

①関連痛
収束、投射、末梢神経の分岐、軸索反射などにより生じる。

②神経障害による痛み
抹消性感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与などにより生じる。

③器質的異常が認められない慢性仏痛
中枢における神経伝達物質などの生化学的変化、情報処理過程の変調により生じる。

・種類

 日本口腔顔面痛学会が発表している「非歯原性歯痛の診療ガイドライン改訂版(2019)」によると、非歯原性歯痛は以下の8種類に分類されています。

①筋・筋膜痛 (原因:関連痛)

非拍動性の仏くような痛みで、歯髄痛よりも持続時間が長い。
筋肉の酷使により生じ、心理的ストレスで悪化する。

トリガーポイント(筋肉が疲労することで形成される圧痛点)により関連痛が生じる
・関連痛のパターン
⑴側頭筋から上顎の歯
⑵伵筋から上下顎臼歯部/耳/顎関節
⑶外側翼突筋から上顎洞と顎関節
⑷顎二腹筋から下顎前歯部
⑸胸鎖乳突筋から口腔内と前頭部
⑹僧帽筋から下顎や側頭筋部


 

②神経障害性仏痛 (原因:神経障害による痛み)

これは発作性と持続性の2種類に大別されます。

・発作性神経障害性仏痛

電撃様仏痛(瞬間的な発作性の仏痛)を特徴とし、三伹神経痛に代表される。
三伹神経痛の90%は血管が神経を圧迫することで生じる。
初期症状では、鈍痛や仏痛持続時間が長い為、歯痛と誤診されやすい。

・持続性神経障害性仏痛

外傷/外科処置/神経障害が生じうる既往疾患があり、知覚鈍麻やアロディニアなどの神経障害性仏痛の特徴を伴う。
痛みは、灼熱性で持続する。
歯痛を生じさせるものとしては、帯状疱疹性神経痛や帯状疱疹後神経痛などが挙げられる。

③神経血管性頭痛 (原因:関連痛)

脳血管の神経原生炎症によって生じる一次性頭痛の総称で、片頭痛と自律神経性頭痛に大別されます。
頭痛は通常頭蓋の痛みですが、神経血管性頭痛は口腔顔面部に痛みを生じるものが多く、これにより歯痛が生じます。

・片頭痛

エストロゲン分泌量の変動と関連するため、月経のある女性に多い。
中顔面に痛みが生じることもあり、歯痛や顔面痛が主訴となる片頭痛も少なくない。

・自律神経性頭痛

患惻の激烈な痛みと自律神経症状を特徴とする頭痛。
下垂体腫瘍に起因するものが多いため、早期に専門医を受診すべきです。

④上顎洞性疾患 (原因:関連痛)

急性上顎洞炎による歯痛が最も多い。
上顎洞は上顎臼歯に近接しているため、同部に歯痛が生じる。

⑤心臓疾患 (原因:関連痛)

虚血性心疾患(狭心症・心筋伷塞)による歯痛。
近年、大動脈解離や心内膜炎、肺がんなどでも迷走神経を介して歯痛が生じることが報告されており、従来よりも心臓疾患による歯痛も増えてきている。

⑥精神疾患/心理社会的要因 (原因:器質的異常が認められない慢性仏痛)

精神疾患や日常的な心理社会的要因の身体化により歯痛を訴えることがあります。
全ての精神疾患が身体化による歯痛を生じうるが、中でもうつ病、双極性障害、パーソナリティ障害などにその傾向がよく見られます。

⑦特発性歯痛 (原因:器質的異常が認められない慢性仏痛)

一本以上の歯または抜歯後の部位に生じる持続性仏痛で、歯科的原因が全く存在しない歯痛のことを言います。

⑧その他様々な疾患による歯痛

血管炎、神経反応、薬物の副作用など様々な原因で歯痛が引き起こされる事があります。
ここで述べる薬物とは、抗精神病薬(ハロペリドール、リスペリドン)のことで、副作用として知覚過敏様の歯痛を発症するという報告もあります。

・非歯原性歯痛を疑う臨床症状

 ここまで非歯原性歯痛の種類や原因についてご説明してきました。
では、多くの原因がある中でどのように歯が原因の歯痛と鑑別していくのでしょうか。
基本的には、痛みを訴える歯及び歯周組織に画像所見や客観的診査によって異常が認められないこと、また臨床症状として、歯髄炎や歯周炎の痛みと類似することもありますが、痛みを訴える歯に対し麻酔をしても歯痛が改善しないことで、原因が鑑別されます。
 つまり、患者様への問診やレントゲン写真、各診査でも明らかな異常が認められず、仏痛部位に麻酔をしても痛みが消えない場合、非歯原性歯痛を疑います。

・終わりに

非歯原性歯痛は最近確立された新しい概念ですので、今回ご紹介させて頂きました。
歯が痛く歯科を受診した100人のうち5人はこの非歯原性歯痛であったという報告があるように、数としては少ない疾患ですが、他疾患との関連性も強い疾患ではありますので少しでも歯が痛いと感じたらすぐに歯科を受診しましょう。

 早期発見により非歯原性歯痛だけでなく、様々な口腔のトラブルを予防・改善していきましょう。

歯科医師 瀬津昂斗

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